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会議における発言の種類と効果的な質問

【連載】ロバート議事規則 第3回 実践編①/発言の種類と効果的な質問

 第2回では、会議には大きく分けて「問題解決型」「情報交換型」「知識吸収型」の3つがあり、ロバート議事規則は「問題解決型会議」において厳格に適用される、というお話をしました。
 では、参加者全員で「問題を解決し、行動方針を決める」ためには、実際の会議の場でどのように言葉を交わせばよいのでしょうか。今回は実践編の第1弾として、ビジネスにおける会議をはじめ、PTAやボランティア団体の会議の質を劇的に変える「発言の種類と効果的な質問」について考えてみたいと思います。

[NotebookLMを使用した音声解説]

会議における「発言の種類」は3つだけ

 会議中の発言は、複雑に見えて実はとてもシンプルです。概ね、次の3つに分類されます。

  1. 質問: 問いただす、事実関係や説明を求める
  2. 意見: 提案に対する自らの主張や考え(賛成・反対)を述べる
  3. 提案: 会議体のとるべき行動を求める(動議を提出する)

 ところが、多くの団体の会議において、この発言の種類があいまいになってしまい、議論が脱線したり紛糾したりすることがよくあります。それは、議案の説明が不十分なことに起因する場合もありますが、「質問」と「意見」の区別がつかないなど、発言の仕方が要領を得ていないことによる場合も少なくないのです。

なぜ「質問」が「批判」にすり替わるのか?

 特に日本の会議でよく見受けられるのが、「質問するつもりの発言が、いつの間にか個人的な意見や提案になってしまい、議論が脱線する」というケースです。
 的を射た「質問」であれば、提案者はそれに対して客観的な「説明」を返すことができます。しかし、議案を正確に理解せぬまま個人的な感想を発言してしまうと、結果的にそれが相手への「批判」や「あら探し」となり、感情的な対立を生んでしまうのです。
 なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。 おそらく、日本人は小学校の頃から「質問することに慣れていない」せいだと考えられます。授業中、先生から「何か質問はありませんか?」と尋ねられ、全員が恥ずかしそうにうつむいてしまったという経験は、誰しもあることでしょう。
 私たちの中には、「質問をすることは、自分が無知であることを晒すようで恥ずかしい」という意識が潜在的にあります。そのため、素直に「ここが分からないので教えてください」と質問するのではなく、無理に自分で答えを出してしまおうとし、それが批判的な「意見」や「感想」となって発言されてしまうのです。

会議を前進させる「効果的な質問」と「NGな質問」

 「聞き上手は話し上手」と言われます。会議において良き聞き手となり、正しい意思決定を導くためには、「効果的な質問」が欠かせません。会議を紛糾させるNGな質問と比べてみましょう。

  • 【NGな質問】感情的で非生産的な質問
    • 例:「なぜ、あんな素人みたいな計画を立てたのですか?」
    • 個人的な感情や批判が混ざった質問は、相手の能力や意図を一方的に非難する「人格攻撃」になりがちです。これにより感情的な対立が生まれ、本来の論点から脱線して会議が停滞します。
  • 【効果的な質問】事実を確認し、未来へ向かう質問
    • 例:「この予算の根拠となるデータはどこにありますか?」
    • 基本となるのは「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」に基づく具体的な質問です。あいまいさがなくなり、情報が整理しやすくなります。

「5W1H」に基づく具体的な質問

項目内容
When(いつ)日時、期限、期間、時期、頻度、開始・終了時刻、納期、…
Where(どこで)場所、所在地、会場、現場、部署、方向、エリア、対象地域、…
Who(誰が)担当者、責任者、取引先、相手方、顧客、参加者、関係者、実施者、…
What(何を)物、こと、業務、商品、サービス、課題、成果物、対象事項、…
Why(なぜ)理由、目的、背景、根拠、必要性、動機、期待される効果、…
How(どのように)方法、手順、工程、使用する道具・設備、実施手段、運用方法、品質基準、
How many(いくつ)、How much(いくら)

 この5W1Hを切り口に質問すると、発言からあいまいさがなくなり、具体的で情報が整理しやすくなります。ビジネスでは、5W1Hに加えて次の2つの「How」を独立して考えることもあります。

  • How many(いくつ):数量、人数、回数、件数、容量
  • How much(いくら):金額、費用、予算、単価、売上、利益、工数

 さらに、ロバート議事規則が目指す「問題解決」の観点から言えば、「なぜ?(Why)」と過去の原因を追及する質問よりも、「どうしたら?(How)」と未来に向けた質問をしたほうが、回答する側も発想が豊かになり、建設的な議論に発展します。

「なぜ予算が足りないのですか?」

「どうしたら予算内で実現できますか?」

効果的な質問が、次の段階「提案(動議)」につながる

 この「効果的な質問」は、単に疑問を解消するだけではありません。会議を次のステップである「提案(動議)」へと導く重要な架け橋になります。
 「どうしたら予算内で実現できますか?」という質問から具体的な事実やデータが引き出されることで、参加者全員の目線が揃います。現状を正確に把握できれば、「では、〇〇の部分を削減してこのように行動しましょう」という、建設的で具体的な「提案」が自然と生まれるのです。

感情的対立を防ぐ「討議の基本ルール」

 効果的な質問を交わし、生産的な会議にするために、ロバート議事規則ではさらに以下のようなルールを定めています。

  • 発言は必ず「議長」を通して行う: 発言者同士で直接言い合うと、どうしても感情的な口論になりがちです。発言は必ず議長(Chair)に向けて行い、議長が交通整理をすることで、冷静な議論を保ちます。
  • 人身攻撃の禁止: 議論すべきは「提案された議案の内容」であり、「提案した人の性格や能力」ではありません。意見と人格を完全に切り離すことが、民主的な会議の大前提です。

会議をコントロールする「議長の役割(ファシリテーション)」

 こうした正しい発言ルールと質問の質を保つためには、会議の進行役である「議長のコントロール(ファシリテーション)」が不可欠です。
 議長は単なる司会進行役ではなく、中立な立場から議論の交通整理を行う責任者です。発言は参加者同士で直接言い合うのではなく、必ず議長を通して行う(一時一件の原則)ことで、私情の持ち込みや直接的な口論を防ぎます。万が一、人身攻撃のようなルール違反があれば、議長は毅然とした態度で制止しなければなりません。

議長席に座る者の「心構え」

 最後に、優れた会議を実現するために議長に求められる「心構え」を挙げておきます。

  1. 時間厳守・用意周到: 会議の開始・終了時間を厳守し、事前の準備と根回しを怠らない。
  2. 団体の規約等に精通: 迷った際の拠り所となる組織のルールを熟知しておく。
  3. 臨機応変・教師的: 不測の事態にも柔軟に対応し、ルールに不慣れな参加者を優しく導く。
  4. 発言権の統制・焦点: 誰が発言権を持っているかを明確にし、議論が論点からズレないよう焦点を合わせる。
  5. 公正無私・冷静沈着: 決して私情を挟まず、常に中立の立場で冷静に場を見渡す。
  6. 正確・節度: 採決や議事のまとめを正確に行い、節度ある態度で会議の品位を保つ。

 効果的な質問の技術と、優れた議長のファシリテーション。この2つが機能すれば、会議の時間は驚くほど短縮され、結論の質は劇的に向上します。

まとめ

 効果的な質問の技術は、ビジネスの会議におけるものだけではありません。PTAやボランティア活動の会議、普段の仕事におけるコミュニケーションや、勉強をする場合、さらには家庭における子育てにも極めて有効な方法です。
 「今の自分の発言は、質問なのか、意見なのか?」 会議の席で、少しだけ立ち止まって考えてみてください。それだけで、会議の時間は驚くほど短縮され、結論の質が向上するはずです。
 次回は、会議の要である「提案(動議)」のルールについて、その処理ステップを具体的に解説します。どうぞお楽しみに!

【次回予告】

第4回は「実践編②:議案(動議)の正しい取扱い方」をお送りします。

【参考文献】
・ロバート議事規則研究所発行 安藤仁介訳 「ロバート議事規則」
萌書房発行 ドリス・P・ジマーマン 著 立木茂雄 監訳 「民主主義の文法」
  ─ 市民社会組織のためのロバート議事規則入門 ─

・(社)日本青年会議所発行 「BIBLE OF JAYCEE」

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