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リスクマネジメント

― SWOT分析から「リスクに基づく考え方」へ ―

【中小企業マネジメント解説シリーズ】第6回

 第5回では、目標設定の前提となる「現状分析」の重要性を取り上げ、SWOT分析やPESTLE分析をご紹介しました。現状分析を行うと、自社にとって有利な点だけでなく、不利に働く可能性のある要因が見えてきます。これらが今回のリスクマネジメントの対象となります。
 今回は、中小企業におけるリスクマネジメントの基本と、ISO品質マネジメントシステムが求める「リスクに基づく考え方」について解説します。

[NotebookLMを使用した音声解説]

ISO9001:2015 品質マネジメントシステムとは

 リスクマネジメントを語るうえで避けて通れないのが、国際規格である「ISO9001:2015 品質マネジメントシステム」です。規格の要求事項は、顧客重視リーダーシップ継続的改善などの原則に基づき、プロセスアプローチリスクに基づく考え方がベースになっています。
 ISO9001の考え方では、現状分析で見つけた課題やリスクが、どの業務プロセスに影響を及ぼすのか。点ではなく線で捉えることで、組織全体の最適化を図ることができます。

現状分析からリスクを特定する

 ISO9001:2015では、リスクを単なる「好ましくない影響」ではなく、「不確かさの影響」と定義しています。 未来がどうなるか分からない「不確かさ」に対して、あらかじめ準備をしておくことで、マイナスの影響を抑え、同時にそこに含まれる「機会(チャンス)」を最大化しようという前向きな考え方です。
 第5回で行ったSWOT分析を、もう一度考えてみましょう。リスクマネジメントの第一歩は、分析結果の中から「目標達成を阻害する要因」をピックアップすることです。次の例を参考にしてください。

  • 内部のリスク(弱み):
    • 特定の社員にのみ業務が集中している(属人化)
    • 設備の老朽化による業務停止の可能性
  • 外部のリスク(脅威):
    • 材料費の急激な高騰
    • 法改正(労働法改正など)への対応遅れ

リスクを「評価」し、優先順位をつける

 すべての不安要素に100%の対策を講ずるのは、資源の限られた中小企業では現実的ではありません。そこで、特定したリスクを次の側面から評価します。

  1. 発生頻度: どのくらいの確率で起こりそうか?
  2. 影響度: もし起こった場合、経営にどれほどの損害が出るか?

 このマトリックス上で「発生頻度が高く、影響度も大きい」ものから優先的に対策(リソースの投入)を決定します。重要なのは、対策を講ずることが新たな「機会(チャンス)」を生むという点です。 例えば、「人手不足(リスク)」への対策として業務をデジタル化することは、結果として「生産性の向上(機会)」という大きなメリットを会社にもたらします。

リスクへの対応

 リスクは、発生頻度影響度によって分析され、リスクアセスメントによる評価の結果、次のように対応していきます。

  1. リスク受容(リスクを受け入れる)← 発生確率(低)×発生時の損害(小)
    例)降水確率が10%以下で小雨程度の予報であれば、傘を持たずに旅行する。
    → その結果、濡れたとしても大した影響はない。
  2. リスク低減(リスクの影響を最小限に抑える)← 発生確率(中)×発生時の損害(中)
    例)降水確率が50%程度で大雨の予報であれば、傘を持って旅行する。
    → その結果、荷物になるが濡れずに済む。
  3. リスク回避(リスクを伴う行動から手を引く)← 発生確率(高)×発生時の損害(大)
    例)降水確率が100%で集中豪雨の予報であれば、旅行しない。
    → その結果、びしょ濡れになることはないが旅行できない。
  4. リスク移転(リスクの影響を第三者へ移す)← 発生確率(低)×発生時の損害(大)
    例)台風の接近する確率が10%で最大風速60mの予報であれば、航空機欠航補償を付
    帯した保険を申し込んだうえで旅行する。
    → その結果、航空機が欠航しても延泊代の心配がない。

 企業を経営するうえで「回避」せざるを得ない状況は滅多にないでしょう。また、「受容」ばかりしていては、損失が積み重なり膨らんでいくことも考えられます。したがって、「低減」と「移転」が現実的な選択肢になります。

リスクに基づく考え方

 リスクに基づく考え方とは、問題が起きてから対処するのではなく起きる前に備える。つまり、リスク(脅威)を把握し、事前に対策を講ずることで、組織の安定性を高めるという考え方です。リスクに基づく考え方によって、好ましい状況が増え、好ましくない状況を減少させることができます。その結果、製品やサービスを一貫して提供し、顧客満足を向上させることができるのです。その結果、
・経営の再現性が高まる
・社員の判断基準が統一される
・トラブルが減る
・顧客からの信頼が高まる
といった効果が期待できます。

まとめ

 ISO9001:2015は、「品質管理の規格」ではなく、安定した経営を行うための考え方を整理したものと捉えることができます。「何が起きるかわからない」という不安は、経営のアクセルを鈍らせます。現状分析で得られた客観的なデータを元に、リスクに正しく備えることで、経営者は自信を持って次の「第7回 経営戦略の立て方」へと踏み出すことができるのです。

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