【建設業マネジメント解説シリーズ】第6回
本シリーズの第1回でも説明したとおり、建設業許可取得のための要件の一つに「財産的基礎または金銭的信用があること」を満たす必要があります。この要件の制定趣旨は、請け負った工事を完成させるための十分な資金力があることの証明によって、工事の発注者や下請業者を保護することにあります。建設業は資材購入や人件費など多額の資金を要するため、許可制度によって、事業の安定性と信用性を確保しています。
本シリーズの第6回では、財産的基礎等の要件を確認するために必要な添付書類(貸借対照表、損益計算書)の意義について解説します。

財産的基礎等とは(建設業法第7条第4号)
請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。
第7条第4号は、二重否定の表現になっているため分かりづらいですが、その意味するところは、倒産することが明白であるような場合を除き、請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していることが必要ということです。
一般建設業の許可を受ける場合の要件
次の①、②又は③に該当する者は、倒産することが明白である場合を除き本号の基準に適合するものとして取り扱う。
① 自己資本の額が500万円以上である者
② 500万円以上の資金を調達する能力を有すると認められる者
「自己資本」とは、法人にあっては貸借対照表における純資産合計の額を、個人にあっては期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいう。
この基準を満たしているかどうかの判断は、原則として既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表により、それぞれ行う。
(建設業許可事務ガイドランより)
一般建設業の許可を受けるには、資産から負債を控除した自己資本の額が500万円以上というのが基準です。このことは、現金預金が500万円以上ということではなく、全財産から銀行等に対する借入金等を差し引いた額が500万円以上ということを意味しています。
許可申請書の添付書類(建設業法施行規則第4条第8号及び第9号)
八 株式会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)第3条第2項に規定する特例有限会社を除く。以下同じ。)以外の法人又は小会社(資本金の額が1億円以下であり、かつ、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上でない株式会社をいう。以下同じ。)である場合においては別記様式第15号から第17号の2までによる直前1年の各事業年度の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び注記表、株式会社(小会社を除く。)である場合においてはこれらの書類及び別記様式第17号の3による附属明細表
九 個人である場合においては、別記様式第18号及び第19号による直前1年の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書
財産的基礎等に係る添付書類は、法人の場合は建設業法施行規則第4条第8号、個人の場合は第9号に示されています。それらは、財務諸表と呼ばれ、一定時点の財政状態を明らかにする貸借対照表(B/S: Balance Sheet)及び一定期間の経営成績を明らかにする損益計算書(P/L: Profit and Loss statement)が中心となります。
以下に、貸借対照表と損益計算書の構造を示します。

貸借対照表は、バランスシートあるいは運用と調達の表ともいわれ、一定時点の財政状態(財物や債権等の資産及び工事未払金や借入金等の負債の状態)を明らかにする表です。
貸借対照表は複式簿記の方法によって作成されますが、簿記の世界では左側のことを「借方」、右側のことを「貸方」と表現します。そして、「借方」に企業の所有する財産を列記することで、どのように資産を運用しているかを示し、「貸方」に銀行等に対する債務(他人資本)及び株主が出資した額(自己資本)を表示することで、どこから資金を調達したかを示します。

損益計算書は、一定期間の経営成績を明らかにする計算書です。単に、利益がいくらあったかということだけではなく、どのように利益が計上されたのか、段階的に計算して表示します。
最終的な利益が本業によって生み出されたのか、それとも、固定資産を売却したことなどの本業以外によって生み出されたのか、詳細に分析することで、その企業の健全性を確認することができます。
損益計算書は、経常的に利益を上げることができる経営能力があるのか、それとも利益は一時的なものなのか等、その企業の将来性をも知ることができるのです。
まとめ
財産的基礎等の要件を確認するために必要な財務諸表(貸借対照表、損益計算書)は、企業の健全経営をすすめるうえで重要な役目を果たします。財務諸表は、日々発生する取引を帳簿に記録し集計することによって作成されます。そのためには、正規の簿記の原則に従って会計処理を行わなければなりません。
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不明な点がある場合は、専門家に早めに相談し、確実な書類準備を進めることが大切です。建設業許可の申請内容に不備がないよう行政書士の専門家に相談することをお勧めします。
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