【建設業マネジメント解説シリーズ】第2回
建設業を営むうえで、誤解が生じやすいのが「建設業許可が不要な工事」の範囲です。特に、建設業法施行令第1条の2に規定された軽微な建設工事や、建設業法第4条に定められた附帯工事の扱いは、現場判断を誤ると法令違反につながりかねません。本稿では、軽微な工事の範囲と附帯工事の考え方を整理し、無許可施工のリスクマネジメントについて解説します。

1.軽微な建設工事の範囲
建設業法第3条第1項ただし書により、軽微な建設工事は建設業許可を要しません。その具体的な範囲は、施行令第1条の2第1項で次のように定められています。
- 建築一式工事以外の工事:工事一件の請負代金の額が500万円未満(消費税を含む)
- 建築一式工事:工事一件の請負代金の額が1,500万円未満(消費税を含む)または延べ面積150㎡未満の木造住宅
この場合の「請負代金の額」は、施行令第1条の2第2項により、
同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。
とされています。
したがって、同一注文者から請け負った複数の工事でも、一体として施工することが予定されている場合には「一件の工事」として合算して判断する必要があります。
2.附帯工事とは
建設業法第4条では、主たる建設工事に附帯して行われる他の工事(附帯工事)について、主たる工事の業種許可をもって施工できると定めています。たとえば、建築一式工事に伴う電気配線工事や給排水工事など、主たる工事の遂行上不可欠なものが該当します。
しかし、附帯工事とみなされるか否かは、単に工種の種類ではなく、一体性・必要性・慣行といった実務的判断によります。
国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」では、次のように示されています。
附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。
つまり、附帯工事とみなすためには「主たる工事に付随しており、分離して発注することが通常想定されない関係」にあることが必要です。
3.現場事例で見る軽微工事と附帯工事の判断
事例① 住宅改修と電気工事を一括請負
- 住宅改修工事:300万円
- 電気設備更新工事:100万円
- 合計:400万円
この場合、一括して同一業者が請け負うのであれば、電気設備工事は住宅改修に附帯する工事とみなされます。請負代金合計は400万円であり、500万円未満であるため「軽微な建設工事」として許可不要です。
事例② 住宅改修を建築業者(300万円)、電気配線を電気業者(200万円)が別契約で請負う
- 各業者の請負金額はそれぞれ500万円未満
- ただし、両工事を合わせると500万円以上
この場合、契約上は別々の工事であり、附帯関係には当たりません。各業者が独立して軽微工事の範囲内で請け負っていれば、いずれも許可不要です。ただし、実態として一体施工が予定されていたり、元請的にまとめて受注している場合は、「一件の工事」とみなされ、合算して判断されます。その結果、500万円以上となる場合は建設業許可が必要です。
4.無許可施工のリスクマネジメント
無許可で建設工事を請け負った場合、
- 建設業法第3条第1項違反(無許可営業)として3年以下の懲役または300万円以下の罰金(同法第47条)
- 元請・下請契約の無効リスク(発注者からの支払拒否・契約解除)
- 行政処分・信用失墜による取引停止・入札排除
といった重大な結果を招くおそれがあります。軽微工事の範囲に該当するか不明確な場合は、附帯関係・契約形態・金額を総合的に確認し、リスクを最小化する判断が求められます。
5.まとめ
- 軽微な建設工事の範囲は「500万円未満(建築一式は1,500万円未満または150㎡未満)」
- 附帯工事は「主たる工事に付随し、一体として施工される工事」
- 「一件の工事」の判断は契約単位かつ施工の一体性で総合的に判断
- 不明確な場合は、許可取得または専門家相談が安全策
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