2月10日は「簿記の日」です。日本で初めて複式簿記を紹介した本として知られている「帳合之法(ちょうあいのほう)」が1873年(明治6年)2月10日に発行されたことから、簿記の重要性の啓発と簿記経理教育の普及向上を図るために、「全経 ZENKEI(公益社団法人 全国経理教育協会)」が2月10日を「簿記の日」として定めたものです。

「学問のすゝめ」と「帳合之法」
「帳合之法」といえば、私が学生時代に初めて「簿記」と出会った頃、教科書の口絵にその表紙の写真が掲載されていたことを思い出します。「帳合之法」は、アメリカ商業学校の簿記の教科書「Bookkeeipng」を福沢諭吉が翻訳したもので、「学問のすゝめ」と並んで、古い封建的な学問観を否定し「実学」こそが国力増進に必要であるという精神で書かれています。
「実学」とは、学問を日常生活や実社会に役に立てる学問のことです。実益につながる複式簿記を学ぶことで、世の中の経済活動が活性化され国力の増進につながると説いています。
中小企業経営者にとっても、「学問のすゝめ」や「帳合之法」の執筆の趣旨は、経営のヒントにつながります。
学者は偉ぶって商売なんてものは品位の高い者が仕事としてやることではないと言うし、金持ちは自ら卑下して商売に学問はいらないと訳の分からないことを言っている。学ぶべきことを学ばないで悪い慣わしに陥っている。いずれも皆商売を軽蔑して、これを学問と思わないのは罪なことである。今このような学者も金持ちもこの『帳合之法』を学べば、西洋実学がいかに大切かを知ることとなるだろう。( 中略 )
全て世の中の諸々のことについて不都合だ不都合だと言って苦情を言うことはたやすいことであるが、その不都合なことを克服することははなはだ難しいことである。
(水野昭彦 著「福澤諭吉著『帳合之法』現代語訳」より)
👉 三笠書房「学問のすすめ」福沢諭吉(著) 檜谷昭彦(翻訳)
学問とは、ただむずかしい文字を知ることではない。わかりにくい古文や和歌を読み、詩を作るような世間に役立たぬ学問をさしているのではない。今、われわれが学ぶべきものは、何か?まずやらねばならぬのは、日常業務に必要な「実用」の学問である。
「簿記」とは
「簿記」は、英語「Bookkeeping」の和訳(音訳)で帳簿記録を意味し、経営活動を一定のルールに従って記録・計算・整理する方法のことです。記入方法により単式簿記と複式簿記に分類されますが、一般に「簿記」という場合は複式簿記のことを指します。複式簿記は、すべての経営活動を原因と結果という貸借複記(二面的記録)によって組織的に記録・計算します。その方法が簿記特有のものであることから、初学者には難解と感じられるようですが、その方法の根本を身に着けることで、様々な文書管理やデータベース管理に役立つのです。
簿記によって、一定時点の財政状態を明らかにする「貸借対照表」と一定期間の経営成績を明らかにする「損益計算書」を作成することができます。これらの財務諸表は税務申告はもちろんのこと、経営計画の基礎資料となるものであり、簿記を理解することで財務諸表が読めるようになるのです。
正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければなりません。そして、正規の簿記の原則の要件として次の3つが挙げられ、その要件を満足することで、記録された帳簿が正確なものといえるのです。
- 網羅性
会計帳簿に記録すべき事実はすべて正しく記録され、記帳漏れや架空記録がないこと - 検証可能性
記録はすべて客観的に証明可能な証憑資料に基づいていること - 秩序性
すべての記録が、一定の法則に従って組織的・体系的に秩序正しく行われていること
「帳簿を読む力」は経営者の武器
福沢諭吉が「帳合之法」を著したのは、商売を「勘」から「科学」へと進化させるためでした。帳簿を正しく読み、数字と向き合う力は、経営者にとって大きな武器となります。福沢諭吉の実学の精神に学びつつ、ぜひ簿記学習への第一歩を踏み出していただければと思います。
「簿記の日」を機に、あらためて簿記の意義を見直してみてはいかがでしょうか。簿記は、過去を記録するためだけのものではなく、現在を把握し、未来を構想するための道具です。経理や記帳を専門家に任せていたとしても、経営者が簿記の基本を理解しているかどうかで、経営の質は大きく変わります。
・決算書の数字の意味を理解できる
・利益とキャッシュの違いを説明できる
・将来の投資や借入を数値で判断できる
これらはすべて、簿記という実学を通じて身につく力です。福沢諭吉が説いた「実学の精神」は、現代の中小企業経営においても色あせることはありません。
(参考文献)
・慶應義塾大学「デジタルで読む福澤諭吉『帳合之法』」
・水野昭彦 著「福澤諭吉著『帳合之法』現代語訳」
・企業会計基準委員会「企業会計原則・同注解」
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