10月になっても、沖縄の陽射しはまるで真夏のよう。海沿いのキャンプ場では、木陰ひとつない砂浜にタープを張るだけで汗が噴き出します。先日、ひとり自転車を漕いで出掛けたキャンプ場では、直射日光に体力を奪われ、タープを張る気にもなれませんでした。
タープを張る場合、効率よく日光を遮ることがポイントですが、そんなときに建設業の知識・建築学が役に立ちます。昨年取得した1級建築施工管理技士補の拙い知識ですが、水平ルーバーは南側に、垂直ルーバーは西日に効果的など、試験の頻出問題を思い出しました。

建築学で涼しく過ごす!沖縄の強い陽射しを制するウィングタープの張り方
建築学の日射遮蔽(しゃへい)の考え方を少し取り入れると、驚くほど快適な空間をつくることができます。
■ 日照と日射
まず知っておきたいのは「日照」と「日射」の違いです。「日照」は明るさを確保する採光のこと。一方「日射」は熱を伴う太陽エネルギー。建築では「光は取り入れても、熱は遮る」設計が求められます。これをキャンプに応用すれば、「明るいけど涼しいタープサイト」がつくれます。
■ 太陽の動きを読む
建築設計では、太陽の角度=「太陽高度」と「方位角」を使って、建物の日影を設計します。
10月の沖縄では正午の太陽高度が約60°。夏より低いとはいえ、午後の西日は依然として強力です。したがって、海に沈む夕陽が見える西向きサイトはロマンチックですが、日射的には最も過酷です。

■ 建築的タープ設営のコツ
- 向き:南を避け、東~北東向きに設営するのが理想。朝日を受けて目覚め、午後の強烈な西日を背にする形です。ウィングタープの場合、メインポールは南北方向に配置し、長い方のポールを北側に向けると日影を得やすくなります。
- 角度:タープを太陽高度に合わせて傾けます。正午付近は高く、午後は低く。これにより、太陽を“切る”庇(ひさし)の役割を果たします。
- 通風:沖縄の卓越風は東寄り。風上側を少し開けることで、熱気が抜けて体感温度が下がります。
- 素材:反射率の高い明るい色(ベージュやライトグレー)は、赤外線を跳ね返し、熱こもりを防ぎます。
これらの工夫は、まさに住宅設計でいう「軒」「ルーバー」「通風計画」と同じ考え方です。
■ キャンプ = 建築を学ぶ最小の実験室
タープ設営は、いわば屋根を設計するミニ建築体験です。太陽の高さを予測し、風向きを読み、地形を利用して快適な空間をつくる。この一連の行動が、建築の基礎「環境設計」そのもの。キャンプ場は自然の実験室なのです。
■ まとめ
沖縄の強い陽射しは、敵ではなく、設計を学ぶ先生です。太陽の動きを読み、風を取り入れ、布一枚で快適な空間を生み出す。ウィングタープを張るたびに、建築学のエッセンスが少しずつ身についていく。「キャンプで建築を学ぶ」——そんな視点を持つだけで、自然との付き合い方が一段と深まります。


